死ぬ前に挨拶に来た?母方祖父

夏といえば怪談です。そこで、母方祖父が死ぬ前に挨拶に来たと思われる謎の体験をさせていただきます。

母方祖父は、晩年、脳溢血で倒れて半身が麻痺しました。何しろ、7人きょうだいの末っ子だったので、姉たちから甘やかされて育ち、成人してからも資産家の婿養子になった父方祖父の世話になっていたので、いまいち根性がなかったそうです。これですから、ハードなリハビリに耐えることなど無理な相談で、結局寝たきり状態になりました。

何年寝たきりだったのかは不明ですが、母方祖父は心臓が強かったので、常人では亡くなっても不思議ではないような状態でも生きていたそうです。それでも、死が近くなったのか、呼吸が遅くなって深い夢でも見ているような状態になり、しばらくすると目が覚めるのを繰り返すようになったそうです。傍から見ていると、この世とあの世を行ったり来たりしているように見えたそうです。

その頃のある週末の午後、当時住んでいた家の台所兼リビングには、家族4人が揃っていました。ちょうど白猫がいた場所からは、8メートルほど離れた所にある玄関がバッチリ見えました。その玄関は、横に表面に凹凸があるガラス張りになっていたので、来客があると右から左に移動する人影が見える構造になっていました。

その時、何気なく玄関を見たら、ガラス越しにずんぐりした小柄な黒い影がありました。すると、影が玄関に近づいてきて、ドアをノックする音が聞こえました。玄関にチャイムがあるのに変だと思いつつ、玄関から一番近い場所にいる母に「ノックが聞こえないの?誰か来たよ!」と伝えました。

母は「ドアを叩く音なんで聞こえなかったわよ!」といいつつ、玄関に行ったのですが、誰もいませんでした。ちなみに、父と姉も離れた場所にいたので、ノックの音は聞こえなかったそうです。白猫の白日夢だったのでしょうか?

我が家の玄関は、奥まった所にあったので、門から適当な距離がありました。おまけに、道路よりも1メートル弱ほど高い場所にあったので、階段もついていました。子供のいたずらだったら、必ず姿を捉えることが可能でした。

偶然にも次の日、母方祖父が亡くなったことを伝える電話があり、そそくさと母は出かけていきました。通夜と葬儀を終えて帰ってきたら、「おじいさんが死ぬ前にみんなの所に挨拶していたのよ」と言い放ちました。

母の話では、祖父が深い夢を見ているような状態になってから、他のきょうだいや縁者の家に無言電話があり、我が家では誰かが玄関をノックする現象が起こったので、祖父が死ぬ前の挨拶に来たという結論に至ったそうです。乱暴な話ですが、祖父は、小柄でずんぐりむっくりした体型で、根性はなかったけれど折り目正しい義理堅い人だったそうです。

この一件で、白猫は母から「霊能力がある」という評価を受けました。(アホらしい)

祖父が死ぬ前に挨拶に来たのかは分かりませんが、あの黒い影とノックの音は記憶に今でも鮮明に覚えています。